2009/09/08

ラ・ジュテ(La jetée) 1962年



パリのオルリー空港の展望台で、子供の頃に見たある出来事の残像にとらわれた男の話。「記憶と時」をさまようクリス・マルケルのSF映画。白黒写真を編集した短編映画です。『サン・ソレイユ』と同様、映画史上重要な位置にあり、世界中にファンがいるカルト的存在の作品です。イギリスの鬼才ピーター・グリーナウェイ監督はこの作品をみて映画を始める事を決心したそうです。



スチール写真だけを編集して『語り』だけで、ストーリーを展開して行くのですが。その緻密な編集と繊細な音響効果は、観る人をどんどん話の中に引き込んで行きます。見終わると長編映画を見た錯覚に陥ります。やはり映画で重要なのはカットの数によるのだと思います。ただ多ければいいわけでもなく、大事なのはカットの編集のリズムなんだと思い知らされる作品です。たった26分で長編並みの編集がされています。



アメリカ映画の『12モンキー』はこの作品をリメイクしたもので、大スターが二人も出演。ブルース・ウィリス主演、そしてブラット・ピットの素晴らしい演技でアカデミーの助演男優賞にノミネートされるほどで、見応えのある作品ですが、ストーリーの『エッセンス』というか、緊張感は断然にこの原作のほうがありますね。『12モンキー』の監督はあのテリー・ギリアムだけど、これは自分の作品というよりも、シナリオ通りに撮った、プロデューサーからの注文作品のような感はまぬがれない。実際、彼は封切り当時のインタビューではマルケルの原作であるこの「作品を見た事がなかった。」というちょいと信じられない発言をしていた。いかに有名な監督と大スターを二人を導引した大作でもっても、マルケルのほんの数人で製作した小品の宝石のような輝きは真似できなかったですね。

マルケルは、あの頃友人が持っていた、人気のあった一眼レフカメラ『ペンタックス』を借りて写真を撮ったといっている。その製作プロセスの簡単さが作品のシャープさの秘密なのかもしれない。

マルケルのこの作品に少なからずも影響をうけている映画は数多いです。
『世界の果てまで』(ヴェンダース監督)のなかで目の見えない母に映像を脳の中で再現するシーンや、近年では『マトリックス』でも、完全に40年前のこの映画の世界観にインスピレーションを求めています。  

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