2009/09/02

秋刀魚の味 1962年







小津安二郎の遺作となったこの作品は、「東京物語」とならんで彼の最もポピュラーな作品です。映画には「秋刀魚」という言葉が一度も出てくる訳でもなく、また「さんま」を食べる場面がある訳でもない。何故「さんま」なのか?
フランスでは「LE GOUT DE SAKE=酒の味」という具合に訳されてます。確かにお酒を飲んでるシーンが沢山あり、こう訳されてもしょうがないと思うけど。

「さんま」は俳句でいう所の「季語」で、季節は秋。食べごろは当然油の乗った秋が一番美味しい時期。つまり秋には、秋の季節を味わなければならない。妻に先立たれ、「人生の秋」にたつ主人公平山周平(笠智衆)は、娘路子(岩下志麻)を手放すという決断をしなければならない。高校の漢文の先生だった佐久間(東野英治郎)は、細々とラーメン屋を営んでいるが、妻に早死にされて、ついつい娘伴子(杉村春子)を嫁に出す時期を失ってしまっていた。それを見て平山は娘が早く結婚するようにと決心する。先生のラーメン屋の名前は「燕来軒」。つばめを待つ家は「春」を待つ「冬」であるが、娘を嫁に出しそこねた彼には春はやってこない。。。 平山の一番下の息子和夫は、ほんのりと恋をし始めた「春」。長男幸一夫婦はまだ喧嘩も耐えない「夏」。そんな人生を俳句の四季に喩えて語られてる美しい作品だと思います。日本人独特の人生感でしょう。当時ヨーロッパではまったく理解されなかったのも当然かもしれませんね。


そしてこの作品が小津監督の最後のメッセージだと思うとやはり感慨深く見てしまう作品です。 ☞




0 件のコメント:

コメントを投稿