2010/10/11

アルノルフィニー夫妻像

フランドルの画家ヤン・ファン・エイクの代表作と言われてます。1434年に描かれたもので、長い間スペイン王室のコレクションにありましたが現在はロンドンのナショナルギャラリーにあります。
油彩画の技術はファン・エイク兄弟が発明したと言われてますが、この作品はそれを証明する最も有名な作品です。板パネルに描かれていて、顔料はそれまでのテンペラ画のように卵白ではなくリンシード(麻)・オイルで練られています。画溶液は松脂から精製されたテレピン油が使われているのですが、今日もこれと全く同じ材料で「油絵の具」が作られています。

この絵画の新技術もさることながら、その稀に見る描写力でも美術史上もっとも素晴らしいものです。
手を繋いだカップルが来客に向かって挨拶をしているところを描いてます。
足元にいる犬の毛並みが素晴らしい。。。この描写は柔軟性のある油彩画ならではのものです。
そして夫妻の間にある奥の壁に、不思議な凸面鏡が掛かっています。
そしてそのすぐ上に『ヤン・ファンクはここにいた』と謎的な記述がされていているのですが、
その凸面鏡の中をのぞくと、夫妻の背中が映っており、その向こうには部屋の扉が開いた状態で、入り口にブルーの服を着た人物が立っています。ちょうどこの絵を観ている人の位置です。そしてその後ろに赤いターバンを巻いた人物がいます。。。
同じくナショナルギャラリーにファン・エイクの「赤いターバンの肖像画」がありますが、
これは彼の自画像と言われています。おそらく「青い服の来客」つまりこの絵を観ている我々の後ろから肩越しに眺める赤いターバンの人物がファン・エイク自身なんでしょう。この絵は「油彩」という新しい技術を取り入れたと同時に、絵画の「外にあるもの」までも描いた最初の作品です。
この絵が所蔵されていたスペイン王室の宮廷画家であったベラスケスが17世紀絵画の傑作『ラス・メニーナス』を描いてますが、これは200年の時を隔ての彼なりのファン・エイクの絵画への返答と言えます。

0 件のコメント:

コメントを投稿