2009/07/02

親愛なる日記 1994年







数多い名監督、名画を生んだかつてのイタリア映画、残念ながら今日では消滅してしまったも同然のような状態。テレビ界の王様ベルルスコーニが首相になるイタリアではテレビの影響が多大で80年代からとたんに映画芸術は廃れてしまった。その中で孤軍奮闘するのがナンニ・モレッテイ。
彼の自分の日常と映画を語った『親愛なる日記』は、イタリア映画の現実や彼の病気とか、かなり深刻なテーマが根底を流れているのにユーモアにみちて面白い。
映画の現状に失望し、今度は『フラッシュ・ダンス』のような踊って歌って楽しいコメディー・ミュージカル映画を夢見ながら「ローマの休日」よろしく、ヴェスパーに乗ってローマの街をさすらうのだけど、乗りながらRAI(アラブのポップ音楽)の王様シェブ・ハーレッドの歌にあわせて踊るシーンは笑わせる。そして夢見る『フラッシュ・ダンス』のヒロイン、ジェニファー・ビールスに出会う!スクーターから飛び降りて彼女に話しかけるのですが、誰が見てもちょっと狂った男にしか見えない。。。何ともおかしい一場面。素顔のジェニファー・ビールスがじつに美しい!


そしてクライマックスは彼の尊敬する、鬼才パゾリーニ監督が殺されて死んだ場所まで行く場面。素晴らしい「ワンシーン・ワンカット」。カメラが後ろから追っかけているだけの単純なシーンだけど、音楽がキース・ジャレットの『ケルン・コンサート』。
天才的ジャズ・ピアニストの今では神話化されたケルンでの即興演奏の録音で、ここではあたかもこの映像のために演奏された音楽のような感じです。マーラーの交響曲が「ヴェニスに死す」のために作曲されたような錯覚に陥るように。。。
ヴィスコンティの多大な費用を掛ける作品とモレッティのインディーな作品とを比べるのは意味がないかもしれないけど、安上がりな製作にもかかわらず、こういう忘れられない感動的シーンを作りだせる彼は、やはりイタリア映画最後の巨匠かも。。。


(ステレオで聴ければ最高)



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