今回のヴェネチア・ビエンナーレに関連した展覧会で最もよかったものの一つはクリニア・スタンパリ財団でのモナ・ハトゥン展でした。
モナ・ハトゥンは1952年にベイルート生まれの女性作家です。政治的理由から故郷パレスチナを離れてカナダのバンクーバーに移り、後にロンドンに拠点を構え現在にいたっています。
現在のイスラム世界における『宗教の重さ』や、またそれから起こる『戦争』への批判や、『亡命生活』や、パレスチナに残る家族との『別離』が彼女の作品の中に必然的に反映しています。
その重厚なテーマにも関わらず、彼女の表現方法は常にポエジーがあり感動します。ヴェネチアのガラス工芸技術を使っての作品がこの上のものですが、繊細で透明なガラスが真っ赤な血の色で、爆撃された瞬間を思い出さずにはいられません。
孤独な部屋、あるのはベッドの台と枕。。。近づくと。
髪の毛がくっ付いた枕があり、それがパレスチナの地図を描いている。近づくとベッドのスプリングが実はイバラの刺がある鉄線だった。
壁にかかっているのはパレスチナの地図を刻んでつくられた手提げかばん、だらりとしたハンガーは自然とパレスチナの形をしている。
この展覧会は二部構成になっていて、一部は最上階のギャラリーでの展示。もう一つはクリニア・スタンパリ美術館内の18世紀のインテリアなどの同じ空間に展示された彫刻やインスタレーションである。
美術館の中で何の気なしに踏んでしまった絨毯には所々に毛が剥げてシミのようになっているが、よくよく見るとそれは世界地図。
18世紀のオブジェに混じって展示されていた夫婦カップのような、そうでないような、不思議なカップ。
そして、最も感動したのは18世紀の椅子に架かったクモの巣に水滴のようについている透明なビーズ。戦火に悲しむ人たちの涙の雫のようでした。 ☞
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