2009/09/02

誰がために鐘は鳴る 1943年





ヘミングウェイの同名の小説を原作とするサム・ウッド監督の作品。これもまた『カサブランカ』についでヨーロッパでの戦場を舞台にしている。ラブ・ロマンス『カサブランカ』で一躍有名になったイングリッド・バーグマンが、今度は一転してスペイン戦争真っ只中、レジスタンスの役で出演。彼女のショートカットの髪型が話題を呼んだ。長身のバーグマンは『カサブランカ』では背の高くないボガートのカメラワークは大変だったようですが、ここではゲーリー・クーパーは身長191cm、彼女が小さくか弱にみえますね。 ☞


カサブランカ 1942年




封切りと同時に世界的に大ヒットしたマイケル・カーティス監督の作品。既に「ハード・ボイルド」で有名だったハンフリー・ボガートと新人イングリッド・バーグマンの共演。ラストシーンで『VICHY=ヴィッシー』のミネラルウォターの瓶を捨てる意味も含め、ナチス党と『コラボ』したフランスの『ヴィッシー政府』という複雑な当時の政治的背景を前提にした緻密な脚本は当時珍しかった。結果的に第二次大戦で米軍のヨーロッパ進出の準備であったともいわれる程、この作品のインパクトは凄かったらしい。
挿入歌の『As time goes by』も世界的ヒットとなり後にジャズスタンダードになりました。




この映画はクランク・インした時はまだシナリオが出来ておらず、アメリカ映画の製作プロセスでは非常に珍しく、そのためイングリット・バーグマンは最後までどちらの男を好きになればいいのか解らなかったらしい、その曖昧な表情がこの映画にまた奥行きを与えているのだと思う。
彼女はこの映画で突然大スターになった記念的作品です。彼女の知的美しさに皆が魅了されました。ヘミングウェイは彼の原作著『誰がために鐘は鳴る』の映画化の際に主人公に彼女を希望したと言われています。 ☞

東京物語 1953年







小津安二郎監督の最も有名な作品。そして最も完成度の高い作品でしょう。世界中の映画関係者によるアンケートでいつも「映画史上に最も重要な映画ベスト10」に必ず入っている。当時フランスでも上映されたそうだけど、全く無視されたようで、あのフランソワ・トリュフォーさえも「退屈な作品」だと批判している。。。
そして四半世紀たった1978年に再びヨーロッパで上映された時、初めてその正しい評価を得て、そして立て続けに小津監督の他の作品も上映されるようになりました。






最初と最後に出てくる尾道の街並とその中を突き抜ける蒸気機関車がこの作品のシンボルのようだ。線路脇にある洗濯物が印象的だった。小津独特の低いカメラアングルも、そして50ミリの標準レンズのみを使い、撮影に対するの徹底ぶりと真剣さがひしひしと伝わってくる。


老け役を演ずる笠智衆、この時彼はまだ40代後半。素晴らしい演技だ。子供の頃に父に、「この俳優一本調子で変なしゃべり方するね」といったら、父が「その一本調子で演技ができるのだから、実に上手いと思わないか。」と言われ僕は「ふ~ん。。。」って返事してだけど、今になってやっと彼の役者としての偉大さがわかりました。






そして山村聰やカリスマ的大女優の杉村春子の名演技も素晴らしい。おばあさん役の東山千栄子も偉大な舞台女優で、数少ない映画出演ではこの作品が最も有名です。
そしてやはり原節子が素晴らしい。「スター」とはこういう人の事を言うのだろう。。。彼女が仕事を一日休みをとって老夫婦と一緒にはとバスにのって東京見物するのだけど、バスの中で揺れる後ろ姿が微笑ましく僕にとっては忘れられない名場面です。

彼女は小津安二郎の死後、映画界を去り、以後まったくもって公共の場に現れていない。スエーデンの大女優グレータ・ガルボも同じように隠遁生活を送った。プライベートを守り続けると同時に、映画の持つ「夢」を我々に与え続けている。。。  ☞


2009/09/01

モナ・ハトゥン展(ヴェニス) 2009年




今回のヴェネチア・ビエンナーレに関連した展覧会で最もよかったものの一つはクリニア・スタンパリ財団でのモナ・ハトゥン展でした。
モナ・ハトゥンは1952年にベイルート生まれの女性作家です。政治的理由から故郷パレスチナを離れてカナダのバンクーバーに移り、後にロンドンに拠点を構え現在にいたっています。

パリ、テキサス (1984年)





カンヌ映画祭でグランプリを獲得した作品で、ヴェンダース監督が一躍有名になった映画です。シナリオはアメリカの劇作家サム・シェパード。音楽はライ・クーダー、映画は知らなくてもこの音楽を耳にした人はいると思う。
記憶を失った一人の男トラヴィスがテキサスの砂漠をさまよい歩くところから始まります。砂漠にある店で気を失い倒れ、弟ウォルトが迎えにくるが一言も口をきかない状態。
そして、やっと初めて口にした言葉が「パリ」。弟の家で実の息子ハンターに再会するも、彼との距離はなかなかちぢまらない。でも二人は結局、トラヴィスの消えた妻ジェーンを捜しに一緒に旅にでる。彼女は義弟に毎月同じ場所から送金していた。

しかしそこに、見つけたのは「覗き部屋」で働くジェーンの姿。。。
ジェーン役のナターシャ・キンスキーが最も綺麗に撮られている映画だと思う。彼女が13歳の時に最初にに女優として映画に使ったのは、このヴェンダース監督だった。

そして最後にハンターが母ジェーンに再会するのを見届けて去って行くトラヴィス。とうとう最後まで主人公の二人は顔を会わせる事がなかった。

ライ・クーダーのギターの奏でる音色と、画家エドワード・ホッパーの絵を思い出させる、ロビー・ミュラーの映像が最高に美しい作品です。『さすらい』で代表される白黒時代とはまたちがうスケールで見応えのある作品です。

「ねたばれ」しないように詳しく書きませんでしたが、是非ともおすすめの映画です!