2009/08/28

Sans Soleil サン・ソレイユ 1983年



クリス・マルケル監督の作品で、映画史のなかでもとてもユニークなものといわれてます。「旅と記憶」をテーマをドキュメンタリ風に仕上げられていて、その舞台は日本とアフリカという組み合わせ。そして至るところにフィクションの要素も多分に含まれていて「想像と現実」を思考した映画ともいえます。

その中の一シーンで80年代のシンセサイザーを使ってフィルム映像をエレクトロニクスの映像に変換していくプロセスを見た時、学生だった僕は凄く感動し胸が高鳴ったを憶えています。しかもその操作をしたのは、彼の友人である日本人のビデオアーチスト「Hayao Yamaneko」氏、

その新しい映像空間を彼はタルコフスキーの大作『STALKER』の賞賛として「LA ZONE ラ・ゾーン」と呼んでいる。
ほんとに沢山のテーマが交錯し、ちょっとでは話し切れない程に内容豊かな作品です。そして見る度に新しいものを発見させてくれる映画です。

日本語版吹き替えは池田理代子さん。マルケル氏が日本でテレビに出ていた彼女の声を偶然聞いて感動し、人を使って彼女を捜しあてて、ナレーションを頼んだそうです。日本語を理解しないマルケル氏はいったい彼女の声に何を聴き取ったのだろうか。日本語版DVDが出たら是非観たいです。 


2009/08/27

椿三十郎 1962年



黒沢監督の映画で、とても好きな作品の一つです。三船敏郎が最も光っていた時代ですね。この映画コミカルなタッチで描かれていますが、その根底には奥深いものが描かれています。
字幕のすぐあとに続くトップシーンではわずか3カットで状況が把握され、観客は話の中にすでに入ってしまっています。その3番目のカットでは、格子戸から見える若侍たちが「ため息」をはいた瞬間から始まってます。その次のカットでは我々はもう彼らの議論の中です。映画の真髄だと思う。。。
そして三十郎が起きて来て言うに、見えない方が、よく見える。。。と既にここでこの作品のテーマが語られている。
そして話が進むに連れて、だんだんと士気はあがるけど、肝心の勝負は不発ばかり。。。結局、最終章で三十郎と室戸半兵衛(仲代達矢)の居合いでの一騎打ち。戦いの中に戦いがあったのだとあらためて認識させられる。そして軟禁されていた城代家老睦田弥兵衛、馬面の醜男を演ずるのは名優、伊藤 雄之助。ずうっと話の中には出てくるのだが実際に顔が見えるのはほんの最後だけで。その存在感のある演技は比類のものだ。まさしく、いなくして演技をしていたようだ。そしてついに三十郎と彼は対面することもないのだが、お互いの事をよくわかっている。最初の「見えないほうが、よく見える」の締めくくりのようなシーンだ。。。



数年前に、確か黒沢明没10周年記念の番組の中で、最後の居合いの勝負について仲代達矢がインタビューで語っていた。彼ら二人は、殺陣まわりを、一ヶ月以上それぞれ別々に練習させられていて、互いに相手の手の口をしらない状態で本番撮りになったそうです。彼はその時、胸元に血の袋をつけさせられたから、やはり自分が死ぬのだろうなとは想像してたらしいけど、でも相手もつけてるかもしれないと思ったらしい。そしてにらみ合う間、本当に怖かったと語っていた。そう睨み合いながらのやり取り、さしずめ今ならアップで互いの顔が交互に写るのが定番だろうけど、ここでは刀を抜くまでワンカット。このラストシーンのもの凄い緊張感は、そのためだったのかと初めて納得させられた。ホントに怖かったと思う。それにしても、やはり黒沢は恐ろしい監督だ。。。こんな娯楽映画の裏に『映画芸術』の真剣勝負が隠されいる作品ですね。



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一昨年だったか、この『椿三十郎』のリメイク版が発表されていた。。。角川映画らしいが、飛行機の中で観てみようと思ったのだが、やはりその映画としての、あまりもの稚拙さに呆れてしまい、5分とみれなかった。あとで調べてみたら「オリジナルのシナリオに忠実」だったらしいのだが、文字に書いてあることも重要だが、映画とはそんな次元じゃないと言いたくなってしまう。あのトップの3番目のカットのように。。。主役の織田裕二が大根だという人もいたらしいが、三船だって他の沢山の映画ではその大根ぶりを発揮している。凄い役者とはどれだけ監督の意思の高さに反応できるかどうかだと思う。織田裕二をこの映画の中の三船敏郎に比較するのは酷な話で、役者の善し悪しというよりも、あきらかにそれ以前の問題だろう。。。